ブルジョワジーの秘かな愉しみ
「ブルジョワジーの秘かな愉しみ(LE CHARME DISCRET DE LA BOURGEOISIE)」(1972 仏 ルイス・ブニュエル監督)
「銀河」「ブルジョワジーの密かな愉しみ」「自由の幻想」をブニュエルのキチガイ三部作(だっけ?)とか言うらしい。大御所になってからのブニュエル爺さんが権力の嵩にかかって好き放題撮ったものだ。ブニュエルの映画はどれも例外なくカッタルイので、いざ観るのには思い切りが必要なのだが、年をとって丸くなるどころか世界を観る目はさらに辛辣で、飄々とした偏屈ぶりがじつに気持ちよい。とはいえ内容といえばたいしたものではないし、シュールとか不条理とか荒唐無稽とか、そういう月並みな言葉でしか表現しようがないうえ、まともに相手にするとバカを観るようにできている。バカな他人を観察しているつもりがひるがえっておのれの後頭部のハゲを眺めているような錯覚に陥る。しまった、またジジイに一杯くわされた!とくやしがるのである。まあアカデミー委員を買収して賞をもらったと嘯き「アメリカ人は約束を守る連中だ」と涼しい顔で言い放つようなジジイの作品を真に受ける方がどうかしている。そういう意味では、ブニュエル爺さんの震える中指は最終的に観客に向かって立てられているとも言えよう。ジジイの寝言に付き合わされたあげくスクリーンの前で「うむ傑作」などと一人ごちている気色わるいインテリ気取り、もしくは「ざまあみろ金もちども!ひゃっはあ〜!」と喜んでいる頭のわるいビンボー人。そういう連中にも等しくブニュエルのあざけりは向けられているのだ。あ、心配しなくてもキミのことじゃないよ。アイツのことだからね!(笑)★1/2