Grand-Guignol K.K.K

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いけん

京都 吉田イサム(六十歳 農業)
よく電車の数人並んで座る横長の座席とかで、けつの形にあわせて座席に凹凸が波状につけられていることがある。この凹凸式シートの本来の趣旨はおそらく、乗客と乗客の境界を暗黙のうちに指示し、醜いスペースの奪い合いや無駄なデッドスペースの発生を極力へらそうというものだと推察される。個人的にはまるでおまえのけつはこういう形だと指摘されているようであまり愉快ではないが、それは私の個人的な感想なのでさておき、電車内における無駄な空間の発生の9割は横柄に大股をひらいたりして必要以上の空間を占有するバカどもに起因するのであり、ひごろそのような大バカどもに対して苦々しい思いを抱いていた私にとってこの凹凸式シートの意義はよく理解できるし、むしろ大いに賛同したいと思っている。ただ、ここでひとつ問題なのは、人間のけつというものはその形状から言っても凹にも凸にもフィットしてしまうようにできており、必ずしもこの境界が有効に機能しないという点である。どういうことかというと、たとえば10人掛けの凹凸式の座席があったとして、基点Aが1.5人分の空間を占有するでぶだったとすると、続くB、C、D、、、は必然的に座席の凸部分にみずからのけつの谷間を装着せざるを得ないという事態が発生する。のみならず、最初のでぶから数えて9.5人目の座席には0.5人分の余剰の空間が発生することになる。0.5人分の座席で事足りる人物がいたとすれば問題はなくなるが、少なくとも私はそんな細い人間をみたことがないし、仮にいたとしてもそんな珍しい人物がそうそう都合よく車内に乗り合わせているとは思えない。つまり、この凹凸式の座席は、けつとけつの境界を曖昧に指示してはいるものの、実質的にはないに等しい、まことに中途半端なサービスと言わざるをえない。これは環境工学的に言ってたいへん非効率的かつ不経済な運用であるのみならず、先のような事態が発生した場合、人間工学的な見地からしてもなんとなく屈辱的なかんじがするのは私だけではあるまい。そこで私は提言したい。けつとけつの境界を明確にするため、その境界に先の尖った鉄柵を設けていただきたい。これならば1.5〜2.0人分を占有するでぶや大股を開いて座る横柄なバカどもは着席してはならないという暗黙の警告になると同時に、デッドスペースをなくした効率的な座席の使用が可能となり、日常的に発生しがちな電車内のフラストレーションの解消につながるのではなかろうか。まさしく一石二鳥のナイス・アイディアーであると自負している。関係者の賢明な判断をお願いしたい。