ちょっといいうんこの話(その2)
こないだトイレに入ると、信じられないぐらいドデカいウンコが便器に直立していた。誇張ではなく、水面に文字通り垂直に突き刺さっているのである。ほとんど「犬神家の一族」のスケキヨ状態。誰かのいたずらにちがいない、しょうがないなあと思って水を流す。ところがウンコはびくともしない。水を流しても流しても流しても、直立不動の姿勢で虚空にむかって敬礼している。ははあ、こいつの生みの親が逃げた理由がわかったぞ。この卑怯ものめ。恐ろしくなって私も逃げた。翌日、くだんのトイレをのぞいてみると、ウンコは跡形もなく消えうせていた。担当者(どんな担当でしょうか笑)に粉砕され無事に冥土へ旅立ったのだろうか。それともどこかの公園の人たちのように別の方法で強制退去させられたのだろうか。なぜか一抹の寂しさをおぼえながら私はトイレを出た。窓外の空を見上げると、積乱雲の彼方にあのウンコがにっこり微笑んでいるような気がした。(了)