非・バランス
「非・バランス(Off-balance)」(2000 日 冨樫森監督/魚住直子原作)
アホまるだしのジャケには正直ひいたけども、映画そのものは暗くてなかなかよかった。夜道で遭遇した伝説の「みどりのおばさん」に救いを求めた少女。それは「みどりのおばさん」ではなくみどりのオカマだったのだが、この出会いが思いがけぬ福音となる。マンガみたいな導入だが、原作はコミックではなく児童文学。少女が「非・バランス」に至った経緯が端折られているため、必然的に薄っぺらい台詞や恥ずかしいシーンも目立つが、全体的に切実さが感じられて好感がもてた。主役の子はぬぼっとデカイけど童顔で憎めず、とびぬけた美少女でないぶん嫌味がない。だから不用意なエロを描く必要もないわけで。最後のみどり頭巾ちゃんなんかすごくクールでかわいかった。なによりあの子犬の鳴き真似にヤラレタ(笑)。安易な癒しや解決を提示せず、人生の苦さと希望をそのまま描き出した爽やかなラストもいい。過去の痛みはそれほど簡単に脱却できるものではない。むしろ飼い慣らし折り合いをつけていくしかないものだろう。大昔の怨みをいまだにひきずりまくっているこの私が言っているのだから間違いありません。まあ「害虫」みたいな薄っぺらい欺瞞映画に比べたらごく素直な作品だし断然お薦めできます。サントラもよし。しかしオカマってせつないよね(笑)。★1/2