DAGON
「DAGON(DAGON)」(2001 西 スチュアート・ゴードン監督/H・P・ラヴクラフト原作)95分
われらは暗黒の深淵を潜り抜け
かの深海の巣窟で
驚異と栄光に包まれ永劫に棲まわん
ラヴクラフトの傑作中篇『インスマスの影(The Shadow Over Innsmouth)』を本格映画化。正直スチュアート・ゴードン&ブライアン・ユズナの映画はもういいやと思っていたのだが、これはなかなか良い。むかし日本でも佐野史郎主演で短編ドラマ化されたが、あれよりはるかにオモシロイ。曇天のなかヘドロのようにうずくまる漁村の佇まいのカッコよさ、突然わらわらっと群がる足の不自由な村人のキュートさ(タコ娘がかわいい)、ダゴン教に乗っ取られるくだりなんかも迫力がある。ゾンビを撃ちまくるだけのしょうもない映画と違うのは、常に提示される孤立無援で最悪の状況、なおかつそこから逃れるすべはないという絶望感がきちんと描かれているからである。このへんがぬるいとダラけた映画になりかねないが、その点カワハギシーンとか臓物描写がけっこうえぐくて容赦なかった。ひとつ注文をつけるとすると、自分のイメージではもう少し連中は魚っぽいルックスで、例のケロケロペタペタという音声を再現してほしかったなあとも思う。★1/2