ホテル・ニューハンプシャー
「ホテル・ニューハンプシャー(THE HOTEL NEW HAMPSHIRE)」(1984 米 トニー・リチャードソン監督/ジョン・アーヴィング原作)109分
「俺はね、ポルノ作家で革命家なんだ。退廃こそ革命を促進するのだ。まず不快感をかもし出したい」
「君はその典型だね」
「そもそも人間それ自体が不愉快な存在なのだ。特にポルノ作家はイヤな存在さ」
「あなた共産主義者?」
「というより個人的には唯美主義者だな。エロスに思い焦がれてエロスに涙する。革命後の世界においてはエロスは失われるだろう」
不快な登場人物たちの不快な言動を軽いタッチで描いた作品。一般の感覚からはズレているので共感できるようなものではなく、映画単体としては特に感銘を受けませんでしたが、重苦しいエピソードの合間にところどころ笑えるシーンがあり、個人的にどうぶつギャグに弱いので、犬の剥製には悶絶して爆笑しました。あのワン公の死体に最優秀助演どうぶつ賞を進呈したい(死んでるけど)。ナタキンがクマの着ぐるみを脱がないのもなんだかすごくいやらしかった。で、話としてはじつに暗い。一家に次々と不幸が襲いかかり、人がどんどん死んでいく。それを特に嘆くでもなくふっきるでもなく、ひたすらボーッと受け止めつつゴソゴソ生きていくという、まあある意味至極平凡な世界観が提示されて終わる。「人生を深刻でないものにすること。それは至難のワザであり、偉大な芸術である」という言葉にすべては集約されるが、これはある種の覚悟、または自棄くその開き直りみたいなものだから、マエムキなんて安い言葉で代用してはいけない。★