エルゾンビ/落武者のえじき
「TOMBS OF THE BLIND DEAD/LA NOCHE DEL TERROR CIEGO」(1971 SPA Directed by Amando de Ossorio)邦題「エルゾンビ/落武者のえじき」Region All English-Subtitled 102min.
うーむ、これはカッコいい。痺れた。光と影のコントラストを生かした絵画的なショットに加え、聖堂騎士団(Knights Templars)の造型がジノ・デ・ロッシのゾンビにも劣らないカッコよさである。眼球はカラスに抉られて盲目なのでブラインドデッド(音にだけ反応する)。墓石を押しのける枯れ木のようなオテテが可愛い。どこで調達したのかおそろいの頭巾をかぶって覆面馬にまたがり、蹄の音を響かせながら悠然と草原を疾駆する姿はまさに荘厳、華麗。騎馬シーンだけスローモーションに切り替わるのだが、これがもう異常に美しい。青空または暗闇に浮かびあがる廃墟を背景に、ノイズのようなお経まじりの陰鬱なBGMが流れ、幻想的な追いかけっこが展開する。逃げ惑う人間どもの醜さに比べると騎士団の佇まい、立居振る舞いはじつに優雅そのもの、食事シーンもごく紳士的である。悲鳴をあげたバカ女の方を一斉に騎士団が振り向くシーンの痛快なこと。逆に騎士団たん以外の場面はどうでもよくて、人間しか登場しない中盤などあまりの退屈さに寝そうになるが、クライマックスの絶望感・虚無感が素晴らしく、映画の欠点を補って余りある。ラストがまた最高。粒子の粗いクローズアップの静止画からカメラが徐々にズームアウトし、そこに延々と流れる悲鳴だけが最悪の状況を暗示するという実に渋い終わり方で、中盤のつまらなさなど完全に消し飛んだ。★★