火垂るの墓
「火垂るの墓(Grave of the Fireflies)」(1988 日 高畑勲監督/野坂昭如原作)88分
むかし『どんなんかな予備校』という関西ローカルのテレビ番組があり、第1回ゲストとして登場した野坂昭如が酔っ払って「横山ノックは天才である」などと色紙に殴り書きしたうえついでにノックを殴って帰ったという伝説が残っていたらおもしろかったのだが、残念ながらそのような事実は確認されていない。代わりに殴られたのが某映画監督。これはそんな大島渚殴打事件で知られる野坂昭如さんの同名小説をアニメ映画化したもので、戦争孤児となった兄妹が飢餓と病気にあえぎながら死んでいくという救いようのない話である。「うちな、もうずっとビチビチやねん」というシズル感あふれる台詞や緩慢かつ唐突な死の描写、それとは対照的にホタルが夜空に乱舞する光景の幻想的な美しさが胸を打つ。ここで思い出すのが、むかし国語の教科書に載っていた『一つの花』という童話。「ひとつだけちょうだい」が口癖の少女がいて、出征する父親に「おじぎりちょうだい」と泣いてねだる。困った父親は世界一大きくて臭い花ラフレシアを娘にプレゼント。父親は戦争に行ったままついに戻らなかったが、花の悪臭はそこらじゅうにひろがり、数ヶ月ものあいだ染みついて消えませんでした・・・という絶望的な話をもとに槇●敬之が「世界に●つだけの花」を作った、という噂は聞いたことがない。★