Phantom Museums: The Short Films of the Quay Brothers
「Phantom Museums: The Short Films of the Quay Brothers」Region1 137+124.min
「The Brothers Quay Collection: Ten Astonishing Short Films 1984-1993」が品切れで入手困難の状態が続いていたが、このたびこんなものが発売されたので購入。
「ヤン・シュヴァンクマイヤーの部屋(The Cabinet of Jan Svankmajer)」(1984)
音楽が「ジャバウォッキー」のズデニェク・リシュカなのでイヤでもシュワンクマイエル的にならざるを得ないのですが、残念ながら人形の魅力が乏しい。★
「ストリート・オブ・クロコダイル(Street of Crocodiles)」(1986)
退屈。めまぐるしいが無意味なシークエンスがダラダラ続きます。映像が凝っている割に響かない。★
「アナモルフォーシス(Anamorphosis)」(1991)
厳密にはクエイ作品ではない。anamorphosis(歪み絵)というのはトリックアートの一種で、斜から見ると別の意味が浮かび上がる、というもの。★
「スティル・ナハトII(Stille Nacht II / Are We Still Married?)」(1992)
「スティル・ナハトIV(Stille Nacht IV / Can't Go Wrong Without You)」(1994)
顔の見えない少女の足への接写とその上下運動。爪先立つ少女の足元にしたたる鮮血と踏みつけられたウサギの前肢・・・。すごく変態的だ。クローズアップは言うまでもなく最もフェティッシュで官能的な映画技法ですが、そこにミニマルな律動が伴うことによってエロスが加速します。アリス幻想のひとつの到達点ともいうべき倒錯的エロティシズム。★1/2
「The Phantom Museum」(2003)
エロいアイテムが満載された博物館の内部をわたくしは迷子となって永遠にさまよっていたいと思います。★
【総評】
なぜわたくしどもは人形アニメに魅了されるのか。それはわたくしどもが助兵衛だからであります。わたくしどもがそこに求めるのは、生命をもたない異形のものの虚ろな美とその人間ばなれした挙動、すなわち「動きまわる非生物」へのエロティックな妄執に他なりません。フィルムのなかで畸形人形たちは、虚無を内包する魂の脱け殻となって、生き生きとした《死》を演じるのです。シュワンクマイエルの禍々しさや生々しさ、変態性や猥雑美*1に比べると、クエイ兄弟の作品は硬質で人工的な香りが漂いますが、その分、映像としてのインパクトには欠ける気がします。★