ナチョ・リブレ 覆面の神様
「ナチョ・リブレ 覆面の神様(NACHO LIBRE)」(2006 米 ジャレッド・ヘス監督)92分
「語りかける声が聞こえる。天国や地獄の話をしてる声が。人生の話もしてるけど 俺は人生を捨てた。俺は聖なる人間。神も知ってる俺が聖なる人間だと」
「スクール・オブ・ロック」はジャック・ブラックの「やけくそのデブ」感を生かした見事な作品だった。目を血走らせたロック中年の見苦しさが、ジャック・ブラックの肥満した腹を緩衝材とすることでよい意味での必死さとなり、観客の共感を呼んだ。しかし今回の役柄には切羽詰まったテンションが感じられず、スポ根でもコメディでもない中途半端な仕上がりになってしまった。確か有名な実話が元になっているはずだが、貧しい修道士という設定はさすがに無理があり、まじめな役柄を福々しいデブが演じると真剣さが欠けるものとなる。またそれを補うべき修道院における陰惨な貧困描写もないので、子供たちのためにルチャ・リブレをやるという動機そのものが浮ついたものにしか映らない。題材がおもしろいだけに、92分という短さが単純に内容の薄さと重なり、いささか物足りなく感じた。ミゼットと尼さんはかわいかった。★