怪奇!兎男
「怪奇!兎男(KOTTENTAIL)」(2004 米 トニー・アーバン監督)76分
人類の原初段階で発生した精霊崇拝や古代神話に登場する半身半獣の神など、古来人類は「動物的なるもの」への畏敬・憧憬を抱き、さらにそれらとの融合・同一化を夢想して参りました。錬金術が目指したフラスコ内での人工生命の創造や現代のクローン技術などの例を持ち出すまでもなく、これは異質なもの同士を融合させんとする人類の飽くなき欲求に端を発するものであろうと考えられるわけですが、より深層の無意識あるいは遺伝子レベルでの本能的な同一化願望と決して無縁ではないように思えます。ひこにゃんなどの動物の着ぐるみキャラクターが人気を博す一方で動物を飼育して屠殺しその屍肉を食す習慣もこの動物との過剰な同一化願望(アニマル・コンプレックス)の現われではないかと思う次第です。また、このような願望は祭礼・儀式等のハレの節目で顔を覗かせるにとどまらず、庶民の娯楽においても様々な形で現れているのであり、映画作品においては概ね人体の変異や畸形化として動物との合一が果たされ、過去に対象となった動物は狼、蝙蝠、猫、虎、象、牛、豚、羊、魚、芋虫、蛙、飛蝗、蜘蛛、蝿など枚挙に暇がございません。
そんなわけでこのクズ映画、わたくしどもの動物コンプレックスを擽(くすぐ)らずにはおかない見事なジャケと邦題ですが、これを考えたやつはとんでもない天才に違いありません。で、この天才のせいで多くの人が金と時間をドブに捨てました。最初のぬいぐるみが出てきた時点で確信犯的なB級的傑作の予感があったものの、その後は文字通りグダグダ、くだらないものを作ってやろうという気概もハッタリもなくひたすら貧しい映像としょうもない台詞で埋め尽くされた紛う方なき《クズ映画》でした。これ以上につまらない映画を探すのも困難ですが、あえて挙げるなら「ブラッド・カルト」「悪魔の息子」「フローズン・スクリーム」「真夜中の喝采」「血まみれ農夫の侵略」「死霊の盆踊り」「フライパン殺人」「ザ・ダーク」「宇宙からのツタンカーメン」など・・・・結構あるな。ξ