ENTTAUSCHUNG
ひまで仕方がないので近所の公園に鳩を観察しにいきました。するとひまでひまで仕方がないという感じのこじきが公園の鳩を無表情に眺めていました。ペットボトルに詰めた水で10倍に薄めたカレーをあげると、こじきはうれしそうに飲み干して、こんな話を始めました。
第一章 鳩ニ・翼デ・シバカレタ
「じっさい鳩がもつ形態のシンメトリックな均衡と無機的な質感、ゼンマイ仕掛けの玩具を想起させる異様な動きには少なからずフェチズムを喚起する要素があると思うのです。さらにキジバトが発する《デデッポッポー》とも表記される独特の節回しの鳴き声には1/fゆらぎ+マイナスイヲン効果が認められております。言い換えるならばわたくしが鳩に感じているのはエロスとポエジーです。わたくしの言うてることがわからんやつは犬のうんこを踏んで爆死したらいいのです」
第二章 闇にひきこもる変態または宇宙のエロス
「大宇宙とのファックという途方もない想像に身をゆだねたことがある方ならおわかりいただけるかもしれませんが、ポエムはひとつのマクロ的な宇宙(コスモ)であると同時にごく身近なところでミクロ的なコスモを体現しています。具体的に言えばそれはうんこです。ひとつひとつのうんこの内部にポエムは存在します。内部にポエムを宿しその輝きを内側から放つからこそうんこはわたくしどものココロを打つのです。銀河のようにちりばめられたうんこのひとつひとつがキラキラとまたたくポエムなのです。さきほどもあたくしは虹色に輝く一組の美しい犬のうんこを拾いました。わたくしは彼らを希望(のあ)と光(ぴか)と名づけ、海に還してやりました。」
第三章 さよなら三角また来てこじき
「おや、もうこんな時間だ。見知らぬお方についつい長話をしてしまいましたね。鳩とうんことポエムの三位一体性なんぞとまくしたて、さぞかし頭のおかしいこじきだと思われたことでしょう。まあそんなわけで、わたくしはこんな風にちいとばかし気難しい、不幸なこじきになってしまったのですよ。ではここらへんでおいとましましょう。仕事(鳩の観察)の続きが残っているもので。ああ、カレー、どうもごちそうさまでした。」