愛のむきだし
- 出版社/メーカー: アミューズソフトエンタテインメント
- 発売日: 2009/07/24
- メディア: DVD
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「愛のむきだし(LOVE EXPOSURE)」(2008 日 園子温監督)237分
道程ラビリンス 1ねん1くみ はらだのぶろう
クロネコ娘・中村麻美たんがいきなり死ぬ冒頭からオープニングタイトルが表示されるまでの1時間にも及ぶプロローグがドライブ感と吸引力に満ちていてすばらしい。とりわけ、色気のない貧乳グラビアアイドル(と少なくともわたくしは認識していた)満島ひかりが本作ではハスキーボイスで啖呵を切りまくり、かつ盛大にパンチラしまくる。そのパンチラは無論エロくもなければ美しくもない。突風に煽られたスカートを満島が「いや〜ん♥」という感じで押さえるシーンのスローモーションが劇中に何度もプレイバックされるが、扱いは完全にギャグである。であればこそ、愛情に恵まれず、荒みきった役どころの満島が見せるその極端なツンデレぶりにわたくしどもはある種の神々しさすら感じざるを得ないのである。本作は計算されたコミカルな演出により、みじんの罪悪感もまじえず変態と純粋の同一性を説くが、その一方で、盗撮にひたむきな情熱を傾ける義兄への満島ひかりの軽蔑のまなざしは、パンチラ窃視を共有する観客にも同時にそそがれていることを忘れてはなるまい。「エクステ」で発案された栗山千明に「変態」を連呼させるという悦ばしい趣向を園子温はさらに発展させ、パンチラ窃視の歓びとマゾイスティクな歓びを観客に等分に投げかける。このように本作は過剰なエンタテインメント性と暴力的な勢いをともなって疾走するが、後半にいたって若干失速する。インスパイアされたという実話部分、すなわちカルト宗教からの家族の奪還という後半部分がいまひとつ迫力を持たない。というのもゼロ教団教祖のカリスマ性や教義の魅力がゼロだからで、一家の狂信や凄惨な破壊行為に至った経緯も説得力に欠けるのだ。そのためやや安易な展開に流れてしまった感は否めないが、だからといって本作の過剰なエンタテインメント性が損なわれるわけではない。本作はどこまでも作為に満ちていて、それはモーセン・マフマルバフの「パンと植木鉢」を想起させるお約束の(映画的な)ラストシーンまで持続する。ここに及んで観客は、仕組まれた映画的陥穽に見事にとらえられると同時に、各々の露出した過剰な本能(亀頭)ひいては高次元のエロースと対峙していることに気づくのだ。★★