目のやり場に困る
困る。困るのである。電車のなかでの目のやり場。特に手持ち無沙汰なとき。目を閉じていればいいのかもしれないが、吊り輪もつかまり棒(っていうのかあれ)もないとき。そういうときはどこを見ればいいのだろうか。そう思って視線をさまよわせていると、前項の「キョロキョロする人」と目が遭ったりするので、予防策としてたいていは窓の外をみるとか、他人が読んでる新聞の見出しをじろじろ見るとか、あさっての方を見るとか、適当なハゲ頭を眺めてやり過ごすことが多いと思うが、窓の外はもちろん周囲の天井以外の視界がすべて人でさえぎられて、適当なハゲすらみつからないとき。しかたがないので「どこでもない」余剰の空間を凝視するため、おずおずと上げた視線の先にいたかわいいおっさんと偶然目が遭ってしまい、思わず二人は恋に落ちるのであった。