ロゼッタ
「ロゼッタ(ROSETTA)」(1999 白・仏 リュック=ピエール・ダルデンヌ/ジャン=ピエール・ダルデンヌ監督)
「あなたはロゼッタ。私はロゼッタ。仕事を見つけた。私も見つけた。友達ができた。私にも。まっとうな生活。私もそう。失敗しないわ。私も失敗しない。」
「少女ムシェット」というたいそうエロい映画があって、どのくらいエロいかというと、
ちょうどこんな感じでエロいのだが、これはその「少女ムシェット」にあからさまなオマージュを捧げた作品である。「おしん」「小公女セーラ」「家なき子」が人気を得た理由は何かと言うと、要するにエロいからである。金も仕事も友人もなく、なぜか行く先々でバイトをクビになるロゼッタ。アル中で淫乱の母親と謎の腹痛を抱え、貧乏のドン底であえぐロゼッタ。もっと不幸になれとあえぐ観客。これが映画的サディズムでなくてなんであろう。効果音を完全に排しつつ手持ちカメラで「ダンサー・イン・ザ・ダーク」風のセミドキュメンタリーを演出する手口はあざとく、カメラはロゼッタの一挙一動を執拗に追いまわすもののその行動原理には謎も多い(あとで貧乏を凌ぐための知恵だと判る)。水で空腹を満たし、ヘタクソなドラムを聞きながら食事するロゼッタ。暗い顔でマスを獲る罠を仕込むシーンやゆでたまごをオデコで割って黙々と食うシーンとかドライヤーでお腹を温めるシーンには悪いけど爆笑してしまった。だが笑ってはいけない。これが社会の最底辺で生きる貧しき人々の群れの姿なのだ。同情するなら仕事をくれ、というわけで恩人の青年をもあっさり裏切るロゼッタ。もちろんそこにロクな結末は待っておらず・・・。それだけに決してラストシーンとは呼べないラストシーンの余韻はぞっとするほどの解放感だ。「少女ムシェット」の聖性でも「マッチ工場の少女」の喜劇性でもなく、両者のあいまいな境界でぶった切ったこのラストはずばぬけていると思った。ただムシェットほどエロくないのは、ひとえにロゼッタ役の女優がプロレスラーのような体型をしているためであろう。惜しい。★★