メイク・アップ
「DEATH GAME」(1977 USA Directed by Peter S. Traynor)邦題「メイク・アップ」Region All 字幕なし
ある大雨の晩、男は妻と子供の留守中にずぶぬれの若い娘二人を泊めてやりました。二人は美しいうえとても大胆だったので、男はついついあんなことやこんなことをしてしまいました。次の朝、男が目にしたのは、わがもの顔でのさばる手のつけられない二匹のキチガイ女でした・・・。
「ひなぎく」を思わせるアホコンビだがあんな可愛いものではなく、また「思春の森」や「小さな悪の華」のような幼年の魔性でもない。そこにあるのは、もっと残虐でゆがんだ女版いけにえ一家とも言うべき純粋の狂気と悪意である。すべてはひたすら観客の不快感と絶望感を煽り、ことごとく神経を逆なでするために費やされる。この手の「寄生家族」を描いた話は古今東西ゴマンとあって、いずれも神経をかきむしられるような不快さに満ちているが、その理由はおそらく現実と隣り合わせの設定が過剰なリアリティーを生み出すためである。じっさい冒頭に「この作品は実話を元にしており、世の男性に警告する目的で作られた」という意味の字幕が出るが、可憐そのものに見えた娘たちが豹変し、凶暴な本性をむきだす瞬間の恐ろしさは総毛だつものがある。ソンドラ・ロックが「恐怖の影」の可憐な畸形美少女ぶりからは考えられないほどのあられもない肢体といやがらせテクを駆使して精神的・肉体的に男を追い詰めていくのだが、能天気なテーマ曲に乗ってこれでもかと繰り出される不快描写の凄まじさに唖然とする他ない。プロットは単純でむしろ月並みな感もあるが、暴君と化した二匹が傍若無人の限りを尽くす様には一頭地を抜く迫力があり、世の男性の淡い幻想というかちんこをコッパ微塵に粉砕すること間違いなし。そして特筆すべきはオープニングとエンディング("Good Old Dad","We're Home")、ともに耳について離れない名曲です。ラストのストップモーションと合わせてすばらしい効果を生んでいます。寓話的な無邪気さと残酷さを併せもつ現代のおとぎ話。字幕はないけどオススメ、マゾで。もとい、マジで。★★