抽象的な会話
(電話の呼び出し音)
「はい」
「伊澤さんですか」
「そうですけど」
「ヒヒヒヒおまえ殺す」
「うわ、誰だおまえは。警察呼ぶぞ」
「どうだ怖しくなったろう。安吾よ、お前は死ぬのが怖しいのだ」
「何だよ安吾って。あんただって怖いだろうが」
「いいえ少しも。なぜなら私どもは霊界で神様にお会いできるからです」
「気の毒に。頭がどうかしてるんじゃないのか」
「神様の悪口を言う人は地獄に堕ちますよ」
「どこかの衆狂団体の方ですか」
「失敬な、我々は神の真実の言葉をお伝えするボランティアだ」
「それを衆狂と言うんだよ」
「では明日1時に河原町ビルの前でお待ち申し上げておりますので、はあはあ」
「勝手に話を進めるな」
「入会金は五万円となっておりまして、はあはあ」
「それよりあなた。私ども佛光會をご存じでしょうか。私たちは誰もが御仏より遣わされた使命をもっており、迷える人々を正しい信心の道へとお導きしてこそはあはあ」