ざくろの色
「ざくろの色(SAYAT NOVA/THE COLOR OF POMEGRANATES)」(1968 米・露 セルゲイ・パラジャーノフ監督)
これはまたなんとも奇態な怪作。まさしく動く絵画と呼ぶべきで、奇抜な構図と強烈な色彩、怪しい動きの連発に呆気にとられて笑うしかない。タルコフスキーとはまた違う作風で、ひとつひとつのショットが宗教画のパロディのような綺想に彩られていて、寺山修司とかホドロフスキーとかのいかがわしい神聖さに近い感覚である。羊が埋め尽くす埋葬シーンとかもう好きすぎ。音楽もあやしさ全開ですね。好き勝手と言ってもふざけているわけではなくむしろ自由な精神の発露と呼べるもので、妄想力の豊かな人が撮るとこういう嫌味なく魅力的な作品になるのだろう。ストーリー性だとかは実質皆無に等しいので全編一気に観るのは辛いが、純粋な映像体験としては「ブラック・ムーン」に次ぐものがあった。ただしセリフはほとんど不要なのでRegion Allの輸入盤でもよかったかな。★★