言っていることは正しいがいまいちどうでもいい。
捨て台詞の研究をしています。まあ捨て台詞なんてものは、いわゆる負け惜しみというか、要するに社会的弱者のルサンチマンが動機の根底にあるので、それをいかに他人に悟られずカッコよく演出するかが大事なのですね。たいしたテクニックではないので真似してみましょう。
代表的なものを挙げると、
「チキショー、おぼえてろよ!」
「アホ言うもんがアホじゃ!」
「今日はこれぐらいにしといたるわ!」
あまりにも常套的すぎて、もはや化石のような表現ですね。
もう少し脅迫じみた捨て台詞にはこんなのもあります。
「ただですむと思うなよ!(後悔しても知らないからな)」
「ママに言いつけてやる!」
「アンタ地獄に堕ちるよ?」
さらに相手の言っていることがわからないときや、てっとりばやく相手の主張を無効化・矮小化したいときなどに使用するのが、
「ふーん」
「で?」
「あ、そう」
「はいはい(笑)」
「ご苦労さまです(笑)」
われながらムカムカしてきました。ここには論理も非論理も介在しない。あるのは子供じみた復讐心だけです。私はめんどくさがりなので議論に参加することはほとんどなく、せいぜい遠くから眺めて楽しむ程度ですが、心のなかでは日常的にこういうフレーズが浮かんできます。本当はここに書けないようなもっとひどいことも思っているのですが、まったくもって失礼ですね。失礼だと思いませんか。失礼ですにょ。
勘違いしやすいのが、いかなる攻撃も同じ論理によって反駁可能であるという点。うまいこと言ったつもりでも、つねに自分のことは棚に上げて都合よく理屈を組み立てているのが人間です。
やはり人間、謙虚が一番。謙虚な姿勢なしにまともに相手してもらえると思ったら大間違いです。いじらしいとか涙ぐましいとか、そういうのに萌えるんであって、元気そうなのを援助してもあまり甲斐がない。ここはひとつ低姿勢という日本人の持ちギャグを活かした捨てゼリフをどんどん開発するべきでしょう。
たとえば言いたいことを言って適当に謝るとか。褒めつつ貶すというか、貶しつつ褒めるというか。いい意味で君はきもい、みたいな。ダサカッコいいみたいな。もしくは奥の手として、思い切って相手に愛を告白するとか。
「マスター、青汁」
「申し訳ございません、青汁はただいま切らしております」
「じゃあ代わりのものを。今夜は飲まずにいられないんだ」
「かしこまりました。・・・どうぞ」
「ぐびっ。ぼえーっ、まずい。まずいというか、恥ずかしい。なんだこりゃ?」
「『絶え間なく注ぐ愛の名を永遠と呼ぶことができたなら言葉では伝えることがどうしてもできなかった愛しさの意味を汁』です」
生きてるってすばらしいですね。