地獄の子守唄
「地獄の子守唄」(1971 日野日出志)
「蝶の家」「七色の毒蜘蛛」「白い世界」「博士の地下室」「どろ人形」「地獄の子守唄」の初期六作品を収めた珠玉の短編集。いずれも幼児的な寓話世界に狂ったユーモアとペーソスが同居する非常にどつぼな作品である。「博士の地下室」のキモイ赤ん坊に快哉を上げつつ、「白い世界」の哀切きわまるリリシズムに涙する。「地獄変」の原型である表題作の「地獄の子守唄」はまぎれもない傑作。鏡に向ってブツブツ呟きつづけるかのような、郷愁すら呼び醒ますその純粋な世界観はあまりにも悲しく、美しい。死ね!死ね!地獄の底へおちてしまえ!主人公の痛切な呪詛に泣きながら爆笑。その呪い、しかと受け取った。★★