ジャッカス・ザ・ムービー 日本特別版
「ジャッカス・ザ・ムービー 日本特別版(JACKASS: THE MOVIE)」(2002 米 ジェフ・トレメイン監督)
便秘ウンコなみに堅固なモラルをもつ私の立場から申し上げると、たいへん下品な映画である。これをみて笑っているひとは頭がおかしいのではないかとすら思う。世界一バカなイレズミ、ナイトパンダ、ゴルフ場でエアホーン、留守番ワニ、電動車椅子、このへんはネタとして洗練されているし、かなり笑った。しかし本作は通常の社会的了解を超えて、本物のゲロとウンコをいきいきもりもりノンモザイクで活写する。「いくらなんでもそこまでやるまい」という予定調和をあざわらうかのように、ザッハリッヒなウンゲロ描写で観客を挑発するのだ。禁忌を侵す表現スタイルは目立ちたい低脳の常套手段だが、一般的な悪趣味通がどこかに自己陶酔や知性のためらい傷を残すのに対し、彼らの場合は道化に徹するいさぎよさと「洒落にならないことをむりやり洒落にする」という明快なポリシーに基づき正真正銘のバカであることを全力で証明する。これぞまさしくプロフェッショナル、筋金入りの見事な一本グソである。とはいえ、ラストの「ジャッカスの息子」のセンスのよさをみるとこいつらがただのキチガイでないことがわかる。インタビューでの発言が意外とまじめなのがそれを裏付けているし、劇中のあの下品な馬鹿笑いも出撃前の特攻隊のヒロポン注射みたいなものかもしれない。いっさいの品性をかなぐり捨て、低次元という名の地平を拓きつづけること、それは「限度を知るために限度を超える」というパラドキシカルな命題の提示にほかならないのだ。ひとつ問題としては、どこかのバカがマネをして逮捕者や死人が出るかもしれないわけだが、まあ知ったこっちゃないよな。★1/2