カリスマ
「あのカリスマは、自分が生きていくためには手段を選びません。一見弱々しいふりをしつつ、他の植物に毒を盛り、自分だけはびこっていく。・・・ただ、奇妙なのは、他の植物があのカリスマを拒絶するどころか、まるで惹かれるようにしてそれに接近して、若い順に倒れていく。」
「カリスマ(CHARISMA)」(1999 日 黒沢清監督)
テーマを出すだけ出して完全放置、まじめなのかふざけているのかわからん描写がダラダラつづき、無意味なラストシーンを意味ありげに提示してあっさり終わる。なんか黒沢さんの映画ってこんなんばっかだなあ(笑)。これで面白くなかったらとっくに干されていると思うが、そこは映像の官能性に自覚的なひとだけあって、大胆なジャンプカットだとか、意味ありげに見えたものをいともあっさり放棄するかと思えばどうでもいい被写体を延々映してみたり、観るものの期待を心地良く裏切りつづけて楽しませてくれる。固定された画面の隅から平凡なものがぬるっと出てきて、そしらぬ顔で凶暴なふるまいをするという構図の多用も映像表現としては非常にエロい。個人的には風吹ジュンと洞口依子の姉妹の行動がやたら笑えた。乗り捨てられた車と炎に包まれるカリスマの画なんて爆笑ものである。という感じで、ガチャガチャしたカメラワークや効果音を排して見せ場を構築する技術は非常に優れているのだが、それだけに映画単体としてみるといかにも散漫で物足りない。いちおう撒き餌として非常にわかりやすい象徴的なテーマが用意されているが、もってまわった凡庸な図式をわざわざぶら下げてみせたのは、要するにテーマありきではなくて、すべてこのオッサンの官能を満たすための道具にすぎないという自己表明みたいなものだろう。ここらへん勘違いすると作品の解釈とやらにとりつかれてうっかり独善的なご高説をぶちまけ赤面するハメになるわけだが、それはまあ個人の自由なのでどうでもいいと思う(笑)。ついでに言うと、役所のひとは正直見飽きた(笑)。★