ヴィタール
「ヴィタール(VITAL)」(2004 日 塚本晋也監督)
ヴィタ〜ル・サス〜ン、健康な髪の輝きを貴方へ(ていうか浅野、髪切れ)。とりあえず脇役の女優(名前知らん)のカオは笑った。解剖実習の死体を前にひきつってるところや狂的に歪んでいく凝視をフラッシュバックで捉えたシーンは爆笑ものだ。浅野も浅野で現実から乖離してどんどん廃人のようになっていくのだが、こちらも実習メンバーへの異常な凝視が笑える。ただ、作品としてどうも致命的と思われるのが、肝腎の死体がまるでリアルでないという点。チャチでもグロければいいのだが、細密画の域に達したスケッチのリアルさに比べると、明らかにオモチャみたいな作り物くささがある。ウソを前提とするホラー映画ならともかく、これは解剖を通じて死者の記憶を取り戻すまじめな話なので、どうしても「絵に描いた餅」的な印象がぬぐえないのだ。ここはひとつドイツとかイタリアから頭のおかしい特殊メイクマンを呼んできて、腸リアルな内臓をつくらせた方がいいのではなかろうか。あんまりグログロにするとイメージに抵触するのだろうが、このさいやむをえないだろう。でも、それ以前にこの映画は話じたいにのめりこめないように思う。それは徹頭徹尾主人公の閉鎖的な世界で自己完結しているからである。話が勝手に進行して勝手に終わるので、単なる個人的な感傷を超えるものが感じられない。個人的な感傷が悪いとは言わないが、そのまま投棄されても処分に困る。ξ