お早よう
「だいたいお前は口数が多い。おしゃべりだ。子供のくせに余計なことを言い過ぎる。すこし黙ってみろ」
「だったら、大人だって余計なこと言ってるじゃないか。こんにちは。おはよう。こんばんは。いいお天気ですね。ああそうですね。あらどちらへ。ちょっとそこまで。ああそうですか。そんなことどこ行くかわかるかい。ああなるほどなるほど。なにがなるほどだい」
「お早よう」(1959 日 小津安二郎監督)
下ネタ満載のアホ映画。登場人物がつねに屁をこいているというなかなか凄まじい脱力ぶりで、巨匠の作品だからと身構えていると肩透かしを食らいます。市井の人間ドラマは個人的に好きではないが、こういう毒入りほのぼのコメディは見ていて嫌味がなくて良い。古いカラー作品特有の発色の悪さに由来するぞっとするような異物感もあまり気にならなかった。なにより登場人物がいい。岸キョン似のババアおもろすぎ。押し売りとの問答がいい。イサムちゃんかわいいね。あと佐田啓二はまじめくさった顔してふざけた役者である。棒読み調の台詞まわしと「おい」の連発が受けた。
「おい。どうして口きかなくなっちゃったんだよ。黙ってると不自由だろ。おい。どうして口きかないんだよ。なんか願かけてんのか? どうしたんだい。おい」
「ぷっ(屁」
という感じの、まあたわいない作品である(屁。★