若草の祈り
「若草の祈り(THE RAILWAY CHILDREN)」(1970 英 ライオネル・ジェフリーズ監督/イーディス・ネズビット原作『鉄道の子供たち』)
オープニングが怖い。顔の見えない人物が暗い部屋の中でプラクシノスコープを覗くとそこにはハト?が羽ばたいていて、アニメ化したハトがそのままタイトルバックになる。なぜハトなのだろう。おれはハトが怖いのだ!(知るか!)。「THE RAILWAY CHILDREN FROM THE CELEBRATED NOVEL BY E.NESBIT」と銘打たれているところを見ると、原作はそこそこ有名らしいのだが聞いたこともない。イギリス映画らしくすこぶる地味なので、存在すらあまり知られていないと思われるが、サリー・トムセットたんがちょっとかわいいので見て損はないと思う。父親が無実の罪で逮捕され没落した一家が、田舎に引越してきて貧乏生活を開始する。子供たちが乞食をする話を中心に日々のエピソードが綴られているが、悲惨な感じはない。「若草物語」の設定をひとまわり小さくして、「大草原の小さな家」風のおおらかな牧歌性をややコミカルに演出しようとしている感じである。原作を消化するためエピソードが適当につなぎあわされた印象もあるが、べつに欠点ではない。「THE END」と書かれた石版をもっての記念撮影というゆるいラストシーンが本作の人畜無害ぶりをダメ押ししているが、べつに欠点ではない。ひとつだけ凶悪なシーンがあって、地すべりを起こした木立がまるで直立した自動人形のようにゆるやかに斜面を移動する様子を子供たちがじっと見ているシーン。あれはとても禍々しくておもしろかった。あと、贈り物って悪くないと思った。大人がやるとどうもわざとらしいというか嘘くさくなるのだが、子供たちの純真な心から出た贈り物は罪がなくていい。高価でなくても心がこもっていればそれは最高の贈り物になるのだ。さてと、ワシもたまった古新聞やマヨネーズの空容器を誰にプレゼントしようかのう。★