Grand-Guignol K.K.K

The half of this site consists of gentleness. The other half of this site consists of lie. Sorry, this is all shit in the end. Here is MATERIAL EVIDENCE: (^ ^)ノヽξ

不幸な子供

bitch692006-04-05


『不幸な子供(THE HAPLESS CHILD)』(1961 米 エドワード・ゴーリー著/柴田元幸訳)
子供が庇護者と切り離されて理不尽な目に遭うというのは児童文学の定番ですね。本書はその極端に純化したエキスを不気味な線画に調合し、素っ気ない文章をつけただけのもの。
「シャーロット・ソフィアは 造花造りの内職をさせられました。(Charlotte Sophia was put to work making artificial flowers.)」
「ごろつきは時おり 幻覚に襲われました。(From time to time the brute got the horrors.)」
「そうこうするうちに、実は生きていたお父さまが 帰国なさいました。(Meanwhile, her father, who was not dead after all, returned home.)」
「とうとう ごろつきが発狂しました。(At last the brute went off his head.)」

等々、淡々とした調子で綴られるこの徹底した救いのなさが逆にすがすがしく感じられ、眺めているだけで楽しくなってくる。余計なフィルターがないので冷たさのなかに透明感があるのだ。訳文もいい。蜥蜴のような怪物が画面の隅にねたっとへばりついているのだが、これは弱者の不幸を凝視する傍観者の粘着性そのものであろう。