ひきにげ
実のところ自分が何ひとつ真面目に考える気がないというよりそもそも思考力すらないという秘密がバレるのを覚悟で白状するが、ここ数日アタマのオムツ感がとれないのである。まるで元詮のゆるんだヴァキュームカーのように腐臭を垂れ流すわが脳髄にとことん愛想が尽きたのであり、つまるところ自分が何ひとつまともにできない精神的カタワに過ぎないと言っては言いすぎだと言っても過言ではないぐらいに愛想が尽きた。ソンナコトハナイと人はなぐさめてくれるものの、ソンナコトナイワケガナイデハナイカ。なぜなら。と私はオムツをしめなおす。その証拠に、どうでもいいことをネチネチ分析するのが得意なネット貴族たち、絢爛たる自己認識をもつあの愉快な精神的オカマたち、要するに諸君のことだが、「似非ダメ野郎」の象徴である彼らの垂れ流す余裕に満ちたほくそえみに思いを馳せるとき、わが《tinKö》は言い知れぬ絶望と憂愁に包まれるのであり、いっそのことアノ連中が漏れなく糞尿で満たした地獄でのたうちまわればいいのに、などとわりと失礼なことを考えながら駅へ向う階段を早足で昇っていると、今しもその傍らを追い抜こうとした一匹のババアが突如私の前にのろのろと立ちふさがった。親切な私はババアを回避するためわざわざ速度をあげて迂回したところババアが追い越されまいとがんばったため無理な体勢でのけぞる羽目になり、タイミングを狂わされた私はしたたかに転倒した。ババアは倒れている私の脇を涼しい顔でスタスタと通り過ぎていく。余裕に満ちたババアの後ろ姿を見送りながら、おれは決してオマエをひとりにはさせない。死んでもオマエにつきまとってやるからな、と固く心に誓った。(つづく)