三月のライオン
「三月のライオン(MARCH COMES IN LIKE A LION)」(1992 日 矢崎仁司監督)118分
御礼 泉シゲチヨ
このたびは徳○島映画祭へお招きに預かり、誠に有難う御座ゐました。百二十六回目のバースディを前にした老人が、由緒ある祭典の末席に名を連ねるのもオコガマシク、寿命が十年縮む思いでは御座ゐましたが、身に余る光栄と存じ有難くお受けした次第で御座ゐます。また、お土産に頂戴しましたサンマのカルパチヨが絶品で御座ゐましたこと、重ねて御礼申し上げます。ついては、僭越ながら映画の感想などを少しばかり述べさせて戴きたく存じますが、余命いくばくもない老人の戯言とお聞き流し戴ければ幸いに存じます。
サテ、「三月のライヨン」を観て小生が感じましたのは、虚無、底なしの透明な虚無で御座ゐます。解体されゆく廃屋や街の佇まいが登場人物の虚ろな心象と重なり、記憶喪失の兄と妹の近親相姦という背徳的主題を際立たせておりました。フォルクローレの醸し出すせつない抒情に裏打されたそれはエロスそのものであり、メクルメク官能のカタチに他なりません。殊に女主人公の短すぎるスカアトの裾が、常にパンテイラの予感を孕みつつ躍動する様に、そこはかとなきエロテシズムの気品を感じました。お蔭様で久しく忘却しておりました青春の血が身中に湧き起こり、寿命が五年はノビタ気がするほどで御座ゐます。
以上で御座ゐます。
百二十六歳にもなってこの程度で、我ながら誠に忸怩たらざるを得ませんが、謹んで諸兄のご寛恕を乞う次第で御座ゐます。★