今日のポエム

推理ポエム・青春の蹉跌　１ねん１くみ　はらだゝいじろう

台所から悲鳴がきこえ
駆けつけると怯えきつた父の姿
「みよ！何だあれは！」
震ゑる手で父が指さした食卓の上には
おほきな堆積物がくろぐろと
蜷局（とぐろ）を巻いてゐたのでございます
それは生物の醜悪さがきわどく物象化したもの
すなわち《UNKO》と呼ばれる物体に他なりませんでした
食卓の向こうに飼い犬のペスが尻尾を振つて居りました
犬はハアハアと喘いでこう云つた
「やあ、だいちやん。気に入つたかい、わたくしのプレゼント！」
犬はうれしそうに濡れた黒い瞳でみつめた
「これがほしかつたんだらう？云はなくてもわかつてるぜ！」
あほか！とわたくしはペスを床にねじふせた
「なにするんだよ、だいちやん！」
舌をへろへろ動かしながら激しくあえぐ犬の
腐つた口に靴下をまるめて蓋をしながら
わたくしは穏やかに諭した
「そのだいちやんと云ふのはよしなさい、
まるでわたくしが大便か何かみたいではないか
なによりお前は犬なのだから
人間のやうに喋つてはいけないのだ。了解（わか）つたね？」
「了解（わか）つたよ、だいちやん！」
犬はうれしそうに大きくうなずいた
そのときわたくしどもの居る台所を
一条の強烈な光が照らしだした
「みよ！何だあれは！」
震ゑる手で父が指さした漆黒の空を
ありえないスピードで移動するまぶしい飛行物体
それは黄金色にかがやく《UNKO》型の宇宙船だつた
宇宙船が放つサーチライトがペスの体を捕らえた
青白いスパークを放ちながら中空へ舞い上がるペス
犬はよろこびを隠し切れないといつた面持ちでかう叫んだ
「ふゝふひつかかつたなおろかなこじきども！
おまえたちのたくらみなどたかがしれている！
さあわたくしどもの陰嚢（ふぐり）に従いなさい
服従すると誓うのだ！」
ほこらしげな犬の顔面にキャメラがズーム
へろへろの舌のクローズアップ（劇終）

【コメント】５行目で犯人がわかりました（笑）