チーム★アメリカ/ワールドポリス
「チーム★アメリカ/ワールドポリス(TEAM AMERICA: WORLD POLICE)」(2004 米 トレイ・パーカー監督)98分
「今度やったらチンポに横から穴あけて小便が四方八方に飛び散るようにしてやる(The next time you pull a stunt like that, I'll drill two holes through your dick, so that when you pee it shoots out in all different directions.)」
「カンニバル!THE MUSICAL」「サウスパーク」のトレイ・パーカーによる悪趣味パペットムービー。実在の人物をおちょくる姿勢はあいかわらず素晴らしいし、いつもながらの楽曲の見事さには目を見張るばかり*1。パペットミュージカルとしては「ミート・ザ・フィーブルズ」*2「パペットTV」*3にも匹敵する破壊力がある。だからこそあえて苦言を呈したい。
まじめすぎる。
「サウスパーク」もそうだが、内容のひどさの割に観終わったあと普通の映画を観たような気分になる。破綻をもくろんでいるのに破綻しない。反映画を掲げながら映画のスタイルにきっちり収まっている。要するに、いわゆるエンターテインメントの枠内にお行儀よく留まってしまっているのである。
まず、人形ができすぎている。「サンダーバード」の模倣から出発したらしいパペットの造形の精巧さ、さらに「キラー・クラウン」のキオド兄弟が開発した台詞から人形の顔面運動を生成するシステムが優れた発明であることは容易に理解できるのだが、人形そのものの特質を捨てて「人間」に近づいたことにより、却って人形特有の無機質さ、人類の不気味なパロディとしてのパペットの凶悪さが失われ、単に人類の醜悪な似姿が浮き彫りになっただけという気がする。わたくしは人類のきもい顔面運動をみたくないし、それを忠実に再現する人形はもはや人類のパロディではなく、人類のグロテスクさの擬似体験に他ならないのではなかろうか。
さらにもうひとつの問題として、本作において設定された反テロ・反セレブ・反アメリカという魔のトライアングルがその先に焦点を結ぶはずであったカタストロフが、ついに実現されないまま空中分解してしまったこと。無能なチーム★アメリカが正義の名のもとに世界の重要文化財を破壊し、平和を標榜する俳優たちがその矛盾と偽善を露呈し、将軍様の大量破壊兵器が発動することによって、最後に地球は木っ端微塵に吹っ飛ぶべきではなかったのか。そんな希望のカケラもない壮大な映像の自爆テロこそ、この映画に対してわたくしたちが望んでいた真のカタルシスではなかったのか。
しかしながら、それでもなお本作が異色のエンターテインメントたりえているのは、この映画に対する最大の功労者であるキム・ジョンイル氏によるところが大きい。その証拠に、将軍様が世界を破滅へ導くべくプロデュースした舞台こそが、本作のなかでもっとも妖しく魅力的な光を放っていたのだ。★1/2