炎上
「炎上」(1958 日 市川崑監督/三島由紀夫原作)99分
エンジョイ 1ねん1くみ ぁいだみつぉ
川端康成・太宰治・三島由紀夫といえば、わたくし的に読んだことない日本人作家の御三家で、ここに教科書掲載率の高い芥川龍之介も加えると四天王の完成ですね。つーか全員自殺してるんだが。まさにJ文学ホラー。おお、美しい日本の私!そんなわたくしのことはさておき、これは市ヶ谷駐屯地で割腹自殺を遂げられた三島由紀夫さんの有名な小説『金閣寺』の映画化作品だそうです。オープニングのおどろおどろしい音楽が超カッチョイイのでちょっと惚れそうになった。見終わるとなんじゃこりゃという思いでいっぱいなのですが。主人公が臭閣寺に火を放つに至った過程が克明に描かれているのですが、まあね、われわれの税金(諸君が払っているとしてだが)を大量投入して保護されている国宝や重要文化財のたぐいに放火ちたい♪と夢想するのはわたくしだけではないと思いますが、わたくしは諸君らのように実行に移す勇気がないし、そんな勇気を持っているのはホンモノのキチガイか低脳だけである。だいたい仏はんがほんまにおらはったらあんな人間が勝手に作り上げた金ピカの悪趣味な偶像崇拝の象徴を放っとくはずがないので焼けたら天罰、残れば欺瞞という究極の選択状態。さあどうする、イムよ!で、映画の感想ですが、主演のえなりかずきさんのドモリ演技も、金満エロ坊主役のポール牧?もなかなか迫力ありましたね。ただ、肝心の炎上シーンがちょっと残念、いまいち迫力に欠ける。やっぱり本物の金閣寺を使っての極彩色のサイケな炎上シーンにお経とかを流せば最高の地獄絵巻が演出できたのではないか。ところで破滅美にカタルシスを見出す心理というのは、単純におのれのなかに渦巻くタナトスをなぞっているだけではないかという気がします。つまり金閣寺に火を放ちたかったのは三島さん本人ではなかろうか。世界を道連れにおのれの肉体と欲望(信仰)を焼き尽くしてしまいたかったのではないでしょうか。なんかてきとうなこと言ってますけどね。劣等感のカタマリの青年の成長物語としては、大江健三郎の『セヴンティーン』を映画化希望したいです。★