裸の十九才
「裸の十九才」(1970 日 新藤兼人監督)120分
「定やんが教えてくれたんやけどな、あの年でオナゴ買いに行くらしいねん。おとなしい顔してまっけど、何をしでかすか分かりゃしまへんて」
青森から東京へ集団就職にやってきたリンゴのホッペをした青年が転落人生を歩み連続殺人を犯すにいたるまでを描いた作品。原田大二郎の三七に分けたロン毛の垂れ具合と凶暴な暗いまなざしが、現代のニートにも通じる鬱屈した心境を代弁しているようでオソロシイ。途中から山田タケの話に変わる。山田タケというのは主人公の母親であるが、タケの物語を通して主人公のどす暗い生い立ちが徐々に明らかにされる。父親はアル中で色きちがいのクズ人間、父親がクズなら母親もたいへんなバカで、極貧のなかで繰り返されるファックと出産、ファックと出産、永遠に続くかと思われる出産地獄のはてにとうとう父親は野垂れ死に、姉は高校生の集団に輪姦されて廃人へ。青森は色情狂の見本市かと思わせます。画に描いたような鮮やかな人生の転落と悲惨に、見てはいけない壮絶なコメディを見てしまったような気がしました。★