ハデー・ヘンドリックス物語
『ハデー・ヘンドリックス物語』(漫☆画太郎著)
どう見ても中年おやじにしか見えない中高生やババアを主人公として、安さ・汚さ・くだらなさに特化した強烈な腐臭を放つ作品群を不定期的にひりだし続ける漫☆画太郎氏の一貫した創作態度は尊敬に値すると同時に、その不条理といおうかシュールといおうか極端なアンファンテリズムに満ちた奇怪な作風は間違いなく天下一品のものであろう。この作品集で感心したのは、
「ゲーハーの時代」不当に貶められたハゲとフサフサの権威がむりやり逆転。負け組のハートをがっちりキャッチ。
「裸一貫」良い意味で小学生レベルの作劇で、暴力と破壊のすえの最低きわまる結末。あまりにひどいので逆に癒される。
「Shall We ババア」ババアに対する作者の愛情がヒシヒシと感じられる作品。何気に良い話で感動的。
このように、漫☆画太郎の漫画の特徴としてある種の爽快感ないし浄化作用が挙げられるのだが、それはたとえば犬のうんこや道端のゲロなど汚いものを観察して得られる歓び、あるいはたまりにたまった宿便・宿ゲロを大量放出する時の歓びに近い、非常に原初的な快感に訴えかけてくるものだ。また、同じコマをコピーして何度も再利用するといった痛快な手抜きテクニック、さらに一冊を読み終えるのに30分もかからないという並外れた効率のよさを見ても、エコロジーの精神に満ちた稀有な漫画家であると言えよう。★1/2