遺体安置室 -死霊のめざめ-
「遺体安置室 -死霊のめざめ-(MORTUARY)」(2005 米 トビー・フーパー監督)95分
(あらすじ)
葬儀屋を経営する母子家庭を襲う恐怖。
(かんそう)
お話は死ぬほどどうでもいいのだが、古今東西のホラー映画の普遍的なテーマをはらんだ興味深い作品なのでトピックごとに解説。
《死体処理》
死体処理はホラーに不可欠の要素である。葬儀屋や墓守が活躍する映画は「恐怖のタランチュラ」「デモンズ'95」「ネクロマンティック特別編」など枚挙に暇がない。同志諸君ならばくだくだしい言葉を並べずともエンバーミングの魅力は容易に了解いただけるであろうし、死体を清める湯灌ババアのエロティックな手技に魅了されたことも一度や二度ではなかろう。しかしながら本作のババアの手際の悪さはイラつくほどでお世辞にもプロフェッショナルとは言えない。海外の葬儀屋事情には明るくないが、本作のような素人同然のおばはんがやってわいけないのではなかろうか。正直はらがたったのでゾンビになったときはざまあみろと思った。
《不安な食卓》
食卓とは不安定な日常の綻びが現れる場所であり、非日常に直結した日常の異空間と言える。ウンコの素を囲んだ仲良し一家の一触即発の食卓風景、そこに垣間見える崩壊の予感と日常の彼方のありえざる恐怖はしばしば喜劇的な色彩を帯びる。「悪魔のいけにえ」でトビー・フーパーが描いたキチガイ一家の食卓風景はじつに象徴的であった。
《生ける屍》
かわいらしいゾンビもどきが死の床から起き上がり、さわやかなゲロの洗礼を生者に浴びせる。およそゾンビ映画の魅力は死者による生者の冒涜という一点にかかっていると言っても過言ではない。異存のある者は死ねと言いたいです。
《少女いじめ》
ひらひらの衣装を着たジェイミーが泥まみれになってキャーキャーとすさまじい。葬儀屋の娘なら近所で疎まれたり学校でいじめられたりするであろうことは想像に難くなく、さらに萌え度も高い。幼女いじめは「悪魔の沼」以来トビー・フーパーが得意とするコンセプトであるが、冒頭から熊のぬいぐるみを抱えた不安そうな幼女に焦点をあて執拗な接写で迫る御大の変態アピールも堂に入ったもの。本作に対するホラー映画ファンの評価はいまいちのようだが、キャーキャー悲鳴をあげる幼女に萌えたい変態処刑には激しくオススメでけます。★