大日本人
「大日本人」(2007 日 松本人志監督)113分
オワライコンビ・ダウンタウンの松本人志が「頭頭」「ビジュアルバム」「サスケ」などで培ったグダグダコントの手法を援用し、劇場公開映画を初監督。何匹か登場するキモ獣の造形やキャラクターのアイデアは非常に優れているし、キモめのルックスのやる気のない中年を主人公に据えてヒーローや日本人への皮肉をこめたパロディとしてはよくできている。かゆいところに手をとどかせないくすぐりと失笑の間で観客は呆れたり退屈したり屁をこいたりしたあげく、「おしまい」のあまりのあっけなさに足をとられてコケるという寸法。映画の作用・反作用をたくみに利用しつつ観客に揺さぶりをかける手際は鮮やかと言うべきで、また映画そのものを茶番化するというもくろみはひとまず成功している。ただ、惜しいことにエンドロールですべてが台無し。エンドマークの後のスタッフロールの背景に本編の楽屋裏とも言うべき「気まずいテーブル」コントを起用しているが、なぜよりによってこれを最後に見せる必要があったのか。本編に比して軽視されがちだがエンドロールこそは映画作品の印象を左右するもっとも重要な要素のひとつである。逆に言うとエンドロールが秀逸な映画は傑作である。ただでさえ最近は作品の感興を殺ぐNGシーン集や無粋な楽屋話があふれているというのに(そんなものはDVDの特典映像にでも任せておけばよいのだ)、最後までぐだぐだコントで締めた意図がよくわからない。観客サービスのつもりかもしれないが、これによってヤラレタという余韻すら骨抜きになり、映画的感興が一挙に減退。結果、作品として陳腐化する。蛇足、余計な一言の典型だと思った。★