心靈治療祕書
『心靈治療祕書』(1914 渡邊藤交著 日本心靈學會本部發刊 昭和5年19版)
我が家の蔵書のなかでもひときわ異彩を放つこのあやしげな本。金箔処理をほどこした立派な装丁で、会員限定頒布の非売品らしい*1。ネットで調べると、日本心霊学会は1908(明治41)年に渡邊藤交氏が京都で設立したとある*2。当時は心霊術や催眠術や超心理学などスピリチュアリズムの勃興期であり、このブームの流れを汲む組織であるのは間違いない。で、「心霊」を冠した書名と組織名、さらに目次に並ぶ「精神的ラジオ放送」「宇宙霊の根本原理」といった楽しげな項目から、こいつはトンデモオカルトが期待できるかもと思ったのだが、内容は至って退屈な医学概説書。どちらかというと手かざし的な民間療法のようである。おもしろくないので途中でやめた。★
*1:amazon.co.jpやNACSIS Webcatでひっかかるのは復刻版(クレス出版)の方。日本心霊学会本部発刊のは古本市場で1万円前後なのでいちおう稀覯書の部類だろう。なお、所有しているものには京都帝大法学部学生(某県出身裁判官のデータベースにも登録されている)の名刺が挟まれていたので、恐らく「布教」に来たこの学生により持ち込まれ、当時の家人がそのまま「入会」したのではないかと想像される。
*2:本部:京都市河原町二條下ル。この団体が現存しているかどうかは不明だが、人文書院の前身という記述も見つけた。なお「あなたの知らない世界」の新倉イワオで有名な「日本心霊科学協会」は別の組織。こちらは皇道大本(大本教)から分派した比較的オカルト色の強い研究機関のようである。