詩篇13
真夜中の喝采 1ねん1くみ ほりうちたかお
近所にでけたメルヘン調のゴミ屋敷に向かって
立ちShöneをしてゐると
壁に走った裂け目から
肥満した幽霊がぬるっと出てきて叫んだ
《コロサレタクナカッタヨー!》
真夜中をひきさくでぶの悲鳴
だうやらこの家では
幽霊を放し飼いにしてゐるやうです
よくみると幽霊の頭は柘榴のやうに
はぜ飛んでゐました
わたくしは感動してつぶやきました
《嗚呼、まるで
きちがひのバットで殴打された、カラス瓜のやうだ!》
《コロサレタクナカッタヨー!》
死者の暗い喜びをかみしめつつ
でぶの幽霊はもう一度わめきました
あまりにうざいので
そのままそいつをつまみあげ
わたくしはないしょのじゅもんをとなえます
《あはれあはれ かけまくもあやにかしこき・・・》
すると幽霊は若干キレ気味に叫びました
《コレデモクラエ!》
でぶの粉砕された頭部から
ヨナクニサンの大群が闇夜に解き放たれた
どどめ色に染まった視界の外で
世界は名もなき者の喝采で埋め尽くされた