さすらいの太陽
- 出版社/メーカー: 日本コロムビア
- 発売日: 2006/09/27
- メディア: DVD
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「さすらいの太陽」(1971 虫プロ 藤川桂介原作/すずき真弓漫画)724分
(あらすじ)
貧しい屋台のおでん屋の娘・峰のぞみ(17歳)は、顔面に占める眼球の面積が常人の二倍もある畸形美少女。同じ高校に通う金持ち娘・香田美紀は偶然にものぞみと誕生日が同じであったが、のぞみの転入と時を同じくして謎のおばはんからイヤガラセを受けるようになり、のぞみの仕業と思い込んでのぞみ(以下「の」)を過剰に敵視するようになる。そうこうするうちに「の」の父親はヤク○に刺されて病院送り、造花の内職をしていた母親は失明の危機に。おもしろいように不幸がふりかかるなか、「の」は歌手をめざして修行を開始する。不幸と喜びが交錯する数奇な運命を背負った少女の奮闘を描くカルトアニメ。
(かんそう)
少女マンガ全般がわたくしは好きなのだが、むかし再放送で観ていたこの陰気かつ貧乏くさいアニメがことのほかお気に入りでした。しかし途中で観る機会を逸して結末まで観ていないはずで、今回BOXセットが非常に安かったこともあり購入した。時代がかった大仰な確信犯的メロドラマ(「まるでメロドラマね」といった自嘲的な台詞が何回か登場する)が魅力的で、全編を一気に鑑賞してしまいました。たまにデッサンが狂って宇宙人(グレイ)のようになるこの畸形美少女のぞみちゃんがだんだん可愛く見えてきます。貧乏のどん底でハアハアとあえぐのぞみちゃんの姿に視聴者も心のちん○を奮いたたせてハアハアとあえぎます。要するに主人公の貧乏少女がこっぴどい目に遭うというシチュエーションがたまらんのですな。のぞみの歌の師匠となる作曲家・江川いさおも、のぞみを庇護するように見えてそのじつ相当な意地悪をしますが、いじめられるのぞみちゃんがエロイからこそわざと意地悪している節があり、分裂した言動を繰り返す江川いさおがただの変態に思えてきます。特に第17話「海女の特訓」のいさおのウキウキした表情が印象的で、のぞみが苦労して獲ってきたあわびを海に投げ返すなどのギャグも冴えています。いさお的にはのぞみちゃんの水着姿も見れるのだから興奮するのも無理はありませんね。さて、のぞみたちを執拗にストーキングする元看護婦・野原道子の存在がまことに不気味なのですが、デスラーなみに顔色の悪いこのおばはんこそ、17年前に産院で二人の赤ん坊の名札を入れ替えて運命を狂わせた張本人であった。金持ちへの過剰な憎悪とかつての自分自身である貧乏人への歪んだ嫌悪感から執拗なイヤガラセをしているようだが、その粘着ぶりは異常というべきで、精神を病んでいるとしか思えません。もう一つきもちわるいのはこのおばはん、途中からまったく出てこなくなるのだが、第23話「まぼろしの歌手」で突如再登場を果たし、そのときには顔色が青から真人間に戻っているではありませんか。いったい道子に何が起こったのでしょうか。さて、ゲリラーズと共演した「嵐山フォークフェスティバル」での衝撃的なデビューを飾ったのぞみ、その後なんやかやとメロドラマチックな展開を経てハッピーエンドを迎えますが、個人的には凡庸な大団円よりも最後にもう一匹二匹死んで終わると嬉しかった。もちろん本作のエンディングテーマでもある超名曲「心のうた」(堀江美都子バージョン)がすばらしいのは言うまでもありません。みなさんもろくでもない毎日をお過ごしのことと思いますが、のぞみちゃんを見習ってくさらずに生きてくださいね(笑)。★1/2