地獄
「ここは汝等の爛れた肉叢から搾り出した膿と腐った屎泥の地だ。好きなだけ食うがいい(This is the pus wrung out of your festering carcasses and a cesspool of your foul wastes. Drink all you wish!)」
「地獄(JIGOKU)」(1960 日 中川信夫)英語字幕あり
日本が今より輪をかけて貧乏だった頃、三ツ矢歌子は可憐な美少女だった。そして本当に何もかもいやになるぐらい貧しかった。日本人は全員長屋に住み、ボロを着て麦飯と沢庵だけで暮らしていた。これはそんな時代のおとぎ話である。神代版に比べると前半が退屈なのでやや評価は下がるものの、その貧しさゆえに調子ハズレの軍艦マーチやらわざとしたような脱力描写やらが生き生きと画面上に躍動する。圧巻はラスト30分の地獄見学ツアー。その徹底したえぐい描写は見事というほかない。グログロかと思いきや意外と美しくもあり、チープさがむしろ斬新に映る。皮剥ぎシーンのオヤジの愛くるしさ、大車輪に乗せられて泣き叫ぶ赤ん坊、ゾンビの行進を髣髴させる亡者の列、すべて薄っぺらいリアリティとは別次元にあるおぞましさであろう。これを観たらごめんなさいごめんなさいと謝りたくなること必至。ま、本当は地獄なんて坊主がでっちあげた単なる悪い冗談だけどね(笑)。ところで本当は神代辰巳のリメイク版の方が欲しいのだが発売されていない。どういうわけか世間の評価も低いようである。原田美枝子がかわいいし、山崎ハコの主題歌とかコント的な演出とか面白いのにねえ。