死んでいるのは誰?
「死んでいるのは誰?(CHI L'HA VISTA MORIRE / WHO SAW HER DIE?)」(1972 伊 アルド・ラド監督)84分
「赤い影」に先駆けてベニスを舞台にした子供の死をめぐる不条理スリラー。雪原の空撮からベール越しの少女の殺人を描く導入部、エンニオ・モリコーネによるテーマ曲(「ピヨピヨ」的な子供のコーラスワークが怖すぎる)に乗って警察の捜査資料がめくられるオープニング・クレジットが強烈にかっこいい。例によって論理部分(謎解き、犯人探し)は退屈で、正直ストーリーには魅力がないが、ニコレッタ・エルミの葬送シーンまでの30分間におけるギミックは極めて優れている。迷宮のようなベニスの町を乱舞する鳩の群れとニコレッタ・エルミの死(葬送シーンの美しさ!)、緊迫感を煽りまくるモリコーネの不気味な音楽、炎に包まれて落下するお人形さん・・・ジャーロの肝がストーリーを骨抜きにしたエログロの美学だとするならば、この奇跡のような体験は何であろうかと思わずにいられない。★