神様の愛い奴
「神様の愛い奴」(1998 日 藤原章/大宮イチ監督)
前略、奥崎謙三大先生。このたび先生のご尊顔に再び拝謁が叶い、その雄姿健在ぶりに感激にむせびつつ筆を執った次第です。「ゆきゆきて、神軍」から実に13年ぶりで刑務所をご出所あそばし、何の略かは知りませんが「G・W・C・A(ゴッドワールドクリエートアソシエーション?)」を設立された先生はこのようなどうみても先生を際物扱いする腐った企画にもその寛大なお心ゆえ参加されたことと拝察いたしますが、あえて老残を晒し理性をかなぐりすててまで生地獄のような撮影現場=魂の戦場へ意気揚揚と赴かれた先生の心中察するに涙が出る思いがいたします。ゴッドワールド随一の大思想家にして大革命家であらせられる先生ですら煩悩と決して無縁ではありえないこと、また恥も外聞もなく生き存えれば神様からこんな素晴らしいご褒美を戴けるのだということを先生は身を挺して我々にご教示くださっているのですね。半分は聴き取り不能ですが上機嫌でのべつまくなしにおしゃべりになる先生、そしていきなり脈絡なしにスタッフにキレる先生(キサマなんだその態度は!はっきりしろってんだ!)のあくまで本分を弁えつつ華麗にその場を演出されるお姿にはひたすら背筋をつめたいものが走る思いです。関係者全員もちろん銃殺覚悟で撮影に臨んだことと思いますが、恐怖と感激のあまり失禁を禁じえなかったことでしょう。あまり関係ありませんが、ケンコバ似のハゲ監督のある意味先生よりタチの悪い言動はトラウマになりそうです。なにはともあれ奥崎大先生の舌鋒鋭い詰問と問答無用の暴力主義に勝てる人間などいませんし、先生の言説に比べれば世の中の人間の垂れ流すくだらないおしゃべりはぜんぶゴミ以下ですね。先生に勝てるのはSMの女王様ぐらいです(さすがの先生もたじろがれるシーンには失礼ながら笑ってしまいました)。最後に、大先生におかれましては今後とも何卒健康にご留意のうえ、24時間片時も休むことなく「血栓溶解法」を実践していただき、100歳でも200歳でもご存命くださるよう心から祈りつつ筆を擱きます。草々
追伸:あと、こんなものを観て喜んでいる人は頭がおかしいのではないかと思いました。ξ
<名シーン抜粋>
「あなたはお帰りにならなきゃいけないわけでしょ?」
「ええ」
「お帰りになったら何でお帰りになるんですか?」
「あの、地下鉄で」
「え?」
「あ、あのー電車」
「え?」
「電車で帰ります」
「え?」
「電車」
「え?」
「電車で帰ります」
「電車で?」
「はい」
「電車?」
「はい」
「地下鉄ですか?」
「JRあのー、JR」
「それがダメ」
「えらいこのたびね、ご迷惑ですけどね、今日あなたはね、どんなことがあったって帰しません私が納得いくまで。だからあなたがね、今日帰るってねっと私が得心いくまで帰。だから気に入らなんだらね、警察を私が呼んであげますからね。あな。不法拘禁なら不法拘禁でね。あなたのそういうね、まなざしね(怒)!まなざし(怒髪)!私の目を見るまなざし!そのまなざしじゃダメだって言ってるんだ貴様!そういう目でなぜ見るんだ!」