Kentucky Fried Pigeon
大手外食チェーン店のマクダーヌゥルがハンバーガーにミミズ肉を混入しているという噂(いわゆるミミズバーガー)は昔からありましたが、これまで公式に検証される機会はなく、大都会の片隅の≪トワイライトゾーン≫に潜む都市伝説のひとつとして、一部のオカルトマニアの間でひそかに温められてきました。そんなもん永遠に温めとけばよかったのですが、最近になってどうもこれが単なる噂ではないのではないかという疑惑が浮上してきたのはみなさん御存じのとおりです。ご承知のとおりいわゆる羊頭狗肉は基本的な詐欺のテクニックとして古くから重宝されてきました。たとえばどっかのオミヤゲとして有名な「ひよこまんじゅう」はその代表であり、その名に反してひよこの肉を使用していません。わたくしのようなひよこ好きはひよこまんじゅうと聞けば当然ひよこの姿焼きかひよこのミンチ、あるいはせめてひよこのエキストラクトが使われているだろうと信じて買うのですが、真相はただのひよこ型のまんじゅうです。原材料表記を確認しない方が悪いと言われるかもしれませんが、「ひよこまんじゅう」があって「ゴキブリまんじゅう」がない理由を考えればそれは酷というものでしょう。ゴキブリはみんなの嫌われものですが、ひよこはみんなの大好物なのですから。同様に「鳩サブレー」もハトを模ったお菓子にナイキ社のマークを入れただけのもので、ハト肉を使用しているわけではありません。ハト肉を使用しないならせめてナイキなんかではなく本物のハトの足跡をつけるといった工夫が必要だと思うのはわたくしだけでしょうか。例外的に「うなぎパイ」にはうなぎパウダーが使われているそうですが、これも入っているのか入っていないのかわからないほどの微量なので、看板に偽りありとまでは申しませんが看板倒れのそしりは免れないでしょう。おまけに「夜のお菓子」という思わせぶりなサブタイトル、これも消費者を裏切っているとの印象がぬぐえません。このような消費者の心理につけこんだ悪質な商法がはびこる現在、わたくしども賢明な消費者としては食品業界に対して声を大にしてわたくしどもの権利を訴えていくべきであると考えます。原材料表示ほどあてにならぬものはない(明記されていないものが入っているあるいは明記されているものが本当は入っていないんじゃないのか?)という疑心暗鬼に陥った消費者の信用を回復するためにも、これからの食品業界は「羊頭を掲げて狗肉を売る」のではなく「狗肉を掲げて羊頭を売る」精神こそが大事なのではないでしょうか。つまり、ただのまんじゅうをまんじゅうとして売るのではなく、看板以上の付加価値をこっそり追加して販売する、たとえば何の変哲もない普通のまんじゅうにみせかけてツチノコやシーラカンスなどの珍獣の肉を混ぜて売るといった隠れたサービス、そういう見えない過剰な心づかいこそが重要ではないかと思うのです。そして、じつを申せばこのような動きはすでに始まっております。「入っているように見せかけて実は入っていないけどやっぱり入っているんだ(でもナイショ)」という手の込んだ新しい形のサービスがひそかに導入されつつあるのです。もちろん表ざたになっては効果がないため、これは業界内でもトップシークレットとして扱われています。ですから「ひよこまんじゅう」や「鳩サブレー」がひよこやハトを使っていないようにみせかけて実はこっそり混入しているという事実は関係者の間で固く口止めされていますし、「うなぎパイ」が仕事帰りのホステスの手によってあくびをしながら箱詰めされているなんてことも口が裂けても言えません。「かっぱ巻き」がカッパの肉を使用していないのは自明ですが大手回転寿司チェーン店の「かっぱ寿司」が捕獲してきたカッパに鮨を握らせているという事実を漏らそうものなら、間違いなくわたくしはこの世から消されるでしょう。賢明な消費者のみなさんとしては、こうした水面下の動きに見て見ぬふりをし、生産者に「かしこく騙される」知恵が必要なのではないでしょうか。信頼している誰かに馬鹿にされていることに気付いたらおしまいですからね。これからもお互いホップ・ステップ・スイーツ(笑)の精神で成長していきたいものです。